経営119番
必読特集!
知恵のあるなしで「倒産」はこれだけ違う

1.「賢い倒産」の意味


 倒産あるいは破産は歓迎すべきことではありません。しかし、どうしても倒産が避けられない時があります。倒産を決意するときにはタイミングと方法が肝心です。タイミングを誤ってもいけませんし、方法を誤ってもいけません。

 見込みのないのに無理な金策をすると、傷口を広げるだけということも多いのです。どこで、どの時点で倒産を選択するかは難しい判断を要求されますが、時期を誤らなければ立派な選択となります。

 私は、上手な倒産とは、以下のような条件を満たすことと考えます。

@倒産しても、弱い立場の債権者になるべく累を及ぼさない
A倒産しても個人財産を確保できる
B倒産後、新しい生活を順調に始めることができる

 タイミングと方法さえ間違えなければ、債権者から追われないで生活でき、個人の財産も何とか確保して生きることも可能です。

 逆に「ダメな倒産」とは、債権者の姿におびえ、逃げ回るような倒産を指します。そして残念なことに、多くの倒産はこの「ダメな倒産」に追いこまれているのです。その原因の一番大きなポイントは、倒産を決意する時期を逸していることと、頼りになる相談相手を持っていない、ということ。これにより、悲惨な状況に陥るのです。

 よく闘って倒産に至るか、責任と決断力を放棄して倒産に至るかでは、天と地ほどの差があります。人間としての器の問題でもありますが、また企業人として再起できるかどうかの分かれ目でもあるのです。

 倒産する必要のない会社が倒産するというのはバカげたことで、なんとか再建に努力しなければなりません。その努力の最大の眼目は金融機関対策です。しかし倒産しかないと判断される時はためらわず、すばやく倒産の対策を取るべきでしょう。

 まず、返済すべき借金を整理してよく眺めてみます。どこからいくら借りているか、誰からどれだけ借りているか、返済期限はいつか。こうしたリストを作成して、重要度や返済すべき対象を絞り込みます。そして同じ立場にある弱い債権者にはなるべく支払ってあげるようにして、大手の金融機関や大口の手形を支払い対象から外すのです。

 例えば1800万円の手形の決済を明後日までにしなければならないとします。現在1200万円しか用意できていません。このような波が今後も押し寄せることが分かっている時、その状態が1年や2年では改善できないと判断した時、さらに銀行に緊急融資を願い出ても認めてくれない時、この時が判断の分かれ目となります。大抵の方はあと600万円を血眼になって調達しようとするのです。

 金融機関と真剣に相談してみてください。もし不調なら、ここが決断のしどころとなります。間違っても高利貸しに走らないことが「賢い倒産」のコツです。そして支払うべき1200万円は倒産のための実費として手元に置いておくのです。

 要するに、借金の返済を中止して、現金をいかに確保するかということです。倒産するにしても法的清算を選ぶ場合は、負債額に応じて裁判所に予納金を納めなくてはなりません。また弁護士の費用も必要です。もちろん家族の生活費も必要なのです。

 これから倒産をするという人に、誰もお金を貸してはくれません。倒産するための資金として、どうしてもある程度の現金が必要だということを理解してください。

 そのためには、金融機関の人には申し訳ないのですが、借金は大手の金融機関に押しつけ、弱者である債権者には累を及ぼさないようにして始末するのがベストでしょう。ともかく倒産するならば、「賢い倒産」を勝ち取ることをすすめたいのです。

 中小企業は資本力もなく、大企業に比べて何かにつけて不利な立場にいます。そのため無理な条件での下請け仕事を押しつけられ、また隙間産業的な部分で成功を収めると今度は大手が参入してまた片隅に追いやられます。しかも、一般に金融機関は大手に厚く、中小企業には酷薄です。

 ですから、倒産をいちいち人生の悲劇だと考えていては、いくら命があっても足りないでしょう。大口借金(銀行)のためにあなたが高利貸しに走るのは愚の骨頂です。金融機関はある程度の損金は折込み済みですから、あなたの会社の不良債権は税金面で損金対象として処理するでしょう。中小企業が倒れて銀行員が責任を感じて自殺したという話は聞いたことがありません。

 個人の資産と会社の資産とを峻別し、会社の倒産を個人にまでなるべく持ちこまないようにし、しかも従業員を守り上手に倒産することで明日が開けるのです。

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1.「賢い倒産」の意味 2.高利貸しに手を出すと・・・
3.誰に相談するのがいいのか 4.倒産もタダではできない
5.法的整理と任意整理の得失 6.銀行との駆け引きで生き残れ
7.銀行との交渉は背水の陣で 8.おわりに