経営119番
必読特集!
知恵のあるなしで「倒産」はこれだけ違う
6.銀行との駆け引きで生き残れ
"危ない会社"に対して銀行が貸し渋りを始めると、大半の場合は急速に体力が落ちてきます。売上金を回収して、その資金で原材料を仕入れ、給料、事務所の維持費、税金を支払えれば問題はないのですが、そのようなことは難しいでしょう。
基本的には入金と支払いには半年近くの時間的ずれがあります。その間の運営資金が自己資金なら問題はないのですが、中小企業の自己資金の比率はきわめて低いのが現状です。つまり、この間の運転資金を銀行から借り入れて運営しているわけです。
この運転資金を、底溜まり資金ともいいますが、貸し渋り現象はこの底溜まり資金が枯渇していくことを指します。池の水がだんだん引いていくようなものです。
こうなると、些細な資金ショートでも会社は持ちこたえることができません。会社の不動産、社長個人の家屋敷もすべて担保に提供していて余裕がないという場合、手形の不渡り一つで、あっという間に倒産に至ります。
銀行は貸し渋りはするが、回収は後回しというような態度はとりません。貸し渋りをするような場合は、より一層回収にも力が入っているはずです。
私たちはこの銀行の圧力と闘いながら、生き残る方法を模索しなくてはなりません。場合によってはいずれかの時点で廃業、清算、ないしは倒産の決断もしなければならないのです。
廃業または倒産の決断をするにしても、前述したように相当なお金が必要です。ですから銀行との駆引きは絶対に必要です。決して引かない覚悟で、銀行とも闘わなければ「賢い倒産」すらできなくなります。
まず銀行に対して行うことの最重要項目をあげておきましょう。
@積立預金や定期預金をやめ、現金を確保する。
A不要な担保の極度額(根担保)を減額する。
B約定書の変更を求めて、元金の返済を延期する。
Cさらに苦しければ、利息の一部棚上げを求める。
以上が苦しくなった中小企業がとれる再建策の最善の方法です。これらのどれ一つとっても銀行が喜んで応じるものではありません。困難なやりとりが求められます。また会社再建に向かっての再建計画書、資金繰り表などの提出も求められるでしょう。
銀行としても、あまり硬直的な対応のみをとっていたのでは、倒産する必要のない会社まで倒産させてしまう結果となります。銀行は不良債権を増やしたくないという考えから、中小企業に貸し渋りを行ったり、強引な回収を行ったりするのですが、個々の企業の実態を正確に把握しているとは限りません。ですから、一律にこうした態度をとることが必ずしも銀行の利益に繋がらないということが分かれば、利息の減免や元金の一時棚上げにも応じることがあります。
元金の返済は何が何でも回収しなければならないというものではありません。むしろ元金は残して、利息が順調に入ってくればそれで問題はないのです。
倒産の場合にも、法的整理に入りますと資金の回収まで時間がかかり、しかもかなりの損を計上しなければならなくなるというデメリットもあります。取引先が倒産することは銀行にとっても困る問題の一つなのです。
銀行側は取引先には見せませんが、おそらく取引先のランク表を作成しているはずです。弁護士の村松謙一さんが書かれた『会社再建の実務Q&A』(オーエス出版社)によりますと以下のようになっているそうです。
A 元金・利息とも約定通りに返済している会社。
B 多少の遅滞はあるものの、遅れながらも元金・利息ともに返済されている会社。
C 利息は約定通り返済されているが、元金は一部しか返済されていない会社。
D 利息は何とか毎月返済されているが、元金については返済のめどがたたない会社。
E 利息の一部しか返済してこない会社。(未払い部分が増大)
F 利息も元金も6ヵ月以上全く返済されず、かつ返済のめどがたたない会社。
金融機関から見れば、AとBの会社はまず問題のない優良な会社といえます。またCとDも今日のような不況下では何とか頑張っている会社ということができます。つまり最低利息が間違いなく返済されていれば、おおむね銀行は納得するわけです。このポイントを中小企業の社長はしっかり押さえておく必要があるでしょう。真面目に元金の返済もしなければ銀行に見放されると思いこみ、無理な金策をして失敗するというのは「ダメな倒産」に至ります。
問題はEとFの会社で、Eの場合は1年2年様子を見て、利息がきちんと払えるようになれば、Dランクの会社の仲間入りということになるでしょう。 一番問題なのはFランクの会社で、私どももFランクの会社に事業を続けよとは言いにくいものがあります。ただし、本業が経常利益の段階で多少なりとも黒字になるメドがあるとしたら話は別です。その場合は債務の元金の返済を棚上げしたり、金利を減免してもらったりすることで黒字に転換できる可能性があります。 この辺の判断は、経営状態が実際はどうなのか、経営者がどこまで金融機関との交渉で最善を尽くしているかによって変わってきます。 |
それにしても、社長一人でこの困難な闘いに臨むのは大変でしょう。苦境の中にある中小企業の、生き残りをかけた闘いをサポートするコンサルタントが、今の世の中には最も求められていることを痛感しています。
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3.誰に相談するのがいいのか | 4.倒産もタダではできない | |||
5.法的整理と任意整理の得失 | 6.銀行との駆け引きで生き残れ | |||
7.銀行との交渉は背水の陣で | 8.おわりに |